シマノのデュラエースホィール WH-7800の整備作業です。
ご依頼は前後ハブの分解整備と振れ取りでした。
このハブの構造は、78シリーズ共通ですが、お問い合わせの多いホィールですので、今回、手順を追って撮影しながら作業いたしました。

WH-7800

デュラエースのシャフト等はアルミ製ですので、必要な工具は、精度の高いものを必ず使用してください。
5mm六角(ヘックス)レンチ2本
17mm薄口オープンスパナ(ハブスパナ)2枚
デュラエースグリス
フリーボディグリス
不繊紙(ふしょくし)ペーパーウェス
パーツクリーナー

フリーを外すところから作業開始


早速作業開始。
作業前の状態は、特に変な感じもなくグリスも充分機能しているように感じます。
カセットスプロケットを外し、最初は、アルミ製のフリーボディを外します。
グリーンのレンチ側が逆ねじになっています。
要するに締める方向(時計方向)で緩みます。

逆ねじに注意


右側の袋ナット状の外側部品を外すと、フリーが抜けます。
思いのほか、汚れています。

フリーを外す


フリーボディを抜いた状態です。

フリーボディを抜く


反対側のロックナットを外します。
このハブの場合、フリー側はフリー構造のみで、反対側にベアリング機能が集約されています。

ロックナットを外す


ロックナットはアルミ製です。
傷めやすいのでハブコーンレンチは幅のあるものを。
外側だけは薄口スパナを使うと部品を傷めません。

スペーサーワッシャーが入ります


共回りを防ぐ意味のワッシャーが入ります。
組む時に忘れず入れてください。

ボールが見えてきた


汚れたグリスとボールが見えてきました。

シャフトの状態


シャフトのグリスは変色しています。
玉押し部分はスリーブ状で、虫食い等の異常がある場合はそこだけ交換できます。
アルミ製のシャフトですので、扱いは慎重さが求められます。
実際、過去に持ち込まれた例ですが、フリーを外す際、逆ねじを知らずに回したのでしょう、フリー側の袋ナット状のものがかじって緩まなくなります。
そうなると分解は強い力で作業せねばならず、シャフトが曲がったりしますので、注意が必要です。

シャフトを抜いた状態


割らないように注意してプラスチックのシールカバーリングを外します。

シールカバーを外す


汚れた内部 ノンドライブサイド


内部はこのように汚れていました。
購入後、一度も分解整備した事はないそうですが、雨天走行もなく走行距離も少ない状態だったそうです。

汚れた内部 フリー側


フリー側はこんな感じに汚れていました。

クリーニング中 ショッププロワイプオールで


内部と部品をワイプオールでクリーニングします。
微細な異物も影響するので、私は以前から布繊維の出ないこのペーパーウェスを作業に使用しています。

フリー側内部 クリーニング後


内部


ベアリングの当たり面はこのように研磨されてとても綺麗です。

玉押し


こちらも同じように見事な仕上げです。

リヤーハブ左側


真円度、表面仕上げ等、非常に高精度な工作機械で作られるデュラエースのハブ。
きちんと整備し続ければ、何時までも精度を維持できるでしょう。
ちなみにボールベアリングはステンレス製です。

玉あたり調整


グリスを引いて玉を乗せ、シャフトを挿入して玉当たり調整をします。
ここは自転車店の腕の見せ所の一つですね。
79シリーズのデュラエースでは、微細な調整が構造的に出来なくなってしまいました。

カバーの向きに注意


動きが渋いとの、お問い合わせのお客様の多くが、このカバーを逆に装着している場合がほとんどです。
段付き側をハブ中心に向けて装着します。
画像の場合、ここから裏返しにして装着します。

トルクレンチで40nm


ハブの動作を確認したら、最後にカセットスプロケットを装着します。
この場合のトルクは40nmです。
アルミ製ボディの78シリーズは、特にトルクご注意ください。

7800シリーズの最初のモデルは、このようにリテーナーを装着せず、ごく狭い幅の椀に1.5分のステンレスボールを丁寧に並べていく作業です。
リテーナーを使用しないため、玉の数が多く出来る利点がありますが、熟練工の手で組立数量も限られてしまうのでしょう、すぐに変更されました。
さらに、使っているうちに、グリスが空洞のハブ中側へ入って行ってしまうとの事で、改良されましたが、作りの良さを特に感じるのが、このハブ形式です。
グリースを通常なら椀側に充分入れるのですが、このハブの場合玉押し側に大目に使います。

フリーホィール奥のラバーシール等の向きも、間違えないように組んでください。

ブログランキング人気blogランキングへ 
にほんブログ村 自転車ブログ ロードバイクへ
にほんブログ村

シマノ製のホィールの場合、最長でも1年半ぐらいでオーバーホールの必要があると思います。
MAVICは約一年で、ミネラルオイルの残量確認とベアリングの確認が。
その他のハブも、フリーボディのグリス切れを毎年点検すると良いでしょう。

WH-7800ホィール 前後 ハブ分解整備標準工賃 5,000円
ベアリング、玉押し損傷の場合、別途部品代がかかります。

この後、ホィールの振れ取り作業を実施して終了です。
振れ取り作業は前後1,500円でした。