先週の秩父ツーリングにお供してもらったのが、この50年前のカメラパール3です。
長きにわたり防湿箱の中で寝かしていたので駄々をこねたのか、2枚目の撮影からフィルム送りの巻止めが効かなくなり、適当な位置で止めて一本は撮りました。
帰路は巻止めが効かないまでも、巻き上がりの位置がレバーの動きでわかりましたので、その位置で止めて撮影を続け帰ってきました。
作品は現像が上がり次第ということで、あとでご紹介させていただきますが、まず自分の機械屋としてのスキルを保つためにも、この古い写真機を修理してみることにしました。
これがカメラの右下にある巻止め部分の部品です。
材質は真鍮とおそらくリン青銅のメタル軸受、小さなひげスプリング等からできています。
昔の技術者との闘いです。
構造がわからないと修理もできません。
以前別の個体でやったことがありましたが、今回とちょっと症状が違っています。
ご覧のように細密な加工が施されています。
このカメラは1956年発売でパール2に自動巻き止装置を加えたもの。すんなり60年近く前の製品です。
当時とてもよく売れた量産カメラであって、海外にも多く輸出されたのでしょう。
時計のような歯車が内側に加工されてもいて、非常に製作に手間がかかる構造。
当時の設計者、機械工職人の知恵と工夫を見るのは大変勉強になります。
故障の場所はこの部分。
この爪がスプリングで押されて歯車を固定する構造なのですが、スプリングがたまにベース部分に引っ掛かり、戻らなくなってしまっていました。
歯車の歯も一部折損しているようですが、折れている感じがしなくて、完成後も問題はなかったです。
これが故障の状態を再現した爪の位置です。
開きっぱなしです。
ごく細いスプリングで爪を押す仕掛けなのですが、時たま外れてしまうのです。
この個体は操作レバーの先のスリットに入り込む部分を折ってしまったようで、カメラ職人さんがすでに修理しています。その方のイニシャルでしょうか、ドライバーの角で書き込んだようなものもありました。
もしかしたらこのスプリングも自作なのかもしれません。
どうも動作が安定しないので、私はスプリングの形状を変えて、それこそ爪を乗り越えるようにセットしなおしました。こうすればこの部分の動作は確実になります。
このカメラの弱点ともいわれている巻止め部分の故障。
ごく小さなスプリングのかけ方ひとつで巻止めが動作しなくなり、無理に回して壊してしまっている個体も多いのでしょう。
このカメラ、レンズが非常に秀逸なのです。
過去の写真
蛇腹カメラは畳むと非常にコンパクト。
フィルムもブローニーと言われる大きいフィルムを使います。
この当時は引き伸ばして写真を焼くのではなく、べた焼きというフィルムをそのまま印画紙に乗せて露光するという方法が主流でした。
このカメラの6ｘ4.5サイズはそれでも鑑賞に堪える画像の大きさがあったのです。
それを現代の高品質なフィルムで撮ると、それこそ新聞の大きさまで引き延ばすことも可能な原版サイズなのです。
自転車にここまで細密な作業は、ハブベアリングや変速レバーぐらいしか思い当りませんが、自分のスキルの維持と、当時の機械工の技、設計技師の考え方。
カニ目レンチで60年の時の扉を開けると、そこから現れる世界に引き込まれてしまいます。
そしてその経験が新しい製品開発のヒントになっていくこともあるのです。
自転車に関係ない話題で、すみません。
決行困っている人が多いのかなと思い、掲載しましたが、カメラは文化遺産です。
自分で修理して壊さないで、修理に出すことをお勧めいたします。
熊本の「中村光学」さんをご紹介しておきます。
レンズから距離計、ファインダー、シャッターに至るまで、機械式カメラを完璧に修理、調整してくれます。
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最近、どん底です。
ほかにも自転車記事がたくさん出ています。
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